薬剤師ゆうの薬の話薬剤師の内緒の話

優しすぎるあの人

【注意】あくまでも私見です。

”お姉さん、風邪ひいちゃったよ”と風邪ひきにも関わらず満面の笑顔でやってきたMさん。傍らでは奥さんが苦笑い。

こんなMさんがうつだったとは今の笑顔からは誰も想像もつかないだろう。

今から1年半前、Mさんの投薬にあたった。それは彼の辛い時間のほんの僅かなごくごく一部を共有する始まりでもあった。

人間と人間が複数いれば相性がいい同士もあれば、そうでない場合もある。それは薬剤師と患者さんでも同じ事。

たまたま私がMさん夫婦と馬が合った。

そしてありがたいことにMさん夫婦からも同様に感じてもらえ、以後指名が入るようになった。

Mさんはなによりもちょっとした日常のなんでもない会話を望んでいた。そう、昼休みに同僚と話すような会話だ。

優しすぎる眼をしたMさんと明るくさっぱりとした奥さんのナイス夫婦。

そんなMさんの心の風邪のきっかけは職場内で自分が役に立たないと思い煩ってしまったこと。

奥さんはMさんと向き合い、そして無理やり心療科に引っ張っていった。

奥さんは自身が無理やり夫を病院に連れて行ってしまった、というところに引っ掛かりを感じていた。

”私でも自分の旦那がそういう状況だったら同じ事をした”と伝えるとほんの少し笑顔を見せた。

あの日から1年半。それまでには色々あった。

最初は2種類の薬を飲むのも嫌がった。大の男がこんなになってみっともない、もっと自分がしっかりしてれば、と悩んでいた。傍らで奥さんも辛そうだった。

”Mさんと同じくらい奥さんも辛いですよ”どれだけ伝わっただろうか・・・。

夜寝られないという悩みもあった。

寝られないから昼間眠い、だから昼寝をしてしまう。そして家にいてもやることがないからテレビを見てるだけ。

外にいってもやることがない。奥さんは働きに出ているため一緒にいられない時間があることを心配していた。

”私も毎日午後には眠くなりますよ。どうしても寝るなら30分以内、我慢できそうだったら私ならベランダで外の空気をすったり、天気がよければ散歩をしますよ。奥さんが帰って夕飯ができてたらMさんの株は大上昇ですよ”

こんな対応で良かったのだろうか・・・。

徐々にMさんの体調は回復に向かっていった。

1人でも薬局にこれるようになった。

休職していた職場も上司と相談した上で楽な部署にまわしてもらえることになった。

”ありがたいことです”と涙顔のMさんがいた。

まだ心配だから薬はもっていたい、というMさんの意思を尊重して医師もしばらくは2種類の薬を処方していたが、それも1種類になった。

その頃職場復帰が決まった。しばらくは残業なしの時間短縮勤務という対応で迎えてくれた職場。

”みんな優しく迎え入れてくれたんです。自分の歓迎会も開いてくれるんです”

初出勤の後薬局にきたMさんの第一声だ。

Mさんの人柄とこんなに温かい職場メンバーなら安心、と思わず親心を発揮する私・・・。

そして、最後には薬がいらなくなった。

”お姉さん、もうここにこなくても大丈夫になったよ。来るたびに色々おしゃべりできて楽しかった。ありがとう”私にとってなによりもの褒め言葉だ。

Mさんの奥さんからは丁寧なお手紙を頂いた。私の大事な宝物の1つになった。

振り返ればMさんのここまでの道のりは短かったのかもしれない。でもそれは今だから思えることで最初はいつまで続くか分からない道のりだった。

Mさんに対する奥さんの深い愛情がなによりもの薬だったと思う。

頑張れといわない、という認識広まっているけれど、”待つ”ことも時には大事なのかもしれない。

心の病の専門家ではないから、私の対応が全て完璧だったとは思えない。間違いがあったかもしれない。

それでも、Mさんとのかかわりは私にとって忘れられないひとコマとなった。

Mさん夫婦の生活が明るくあり続けるよう願ってやまない・・・。

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【注意】あくまでも私見です。

”お姉さん、風邪ひいちゃったよ”と風邪ひきにも関わらず満面の笑顔でやってきたMさん。傍らでは奥さんが苦笑い。

こんなMさんがうつだったとは今の笑顔からは誰も想像もつかないだろう。

今から1年半前、Mさんの投薬にあたった。それは彼の辛い時間のほんの僅かなごくごく一部を共有する始まりでもあった。

人間と人間が複数いれば相性がいい同士もあれば、そうでない場合もある。それは薬剤師と患者さんでも同じ事。

たまたま私がMさん夫婦と馬が合った。

そしてありがたいことにMさん夫婦からも同様に感じてもらえ、以後指名が入るようになった。

Mさんはなによりもちょっとした日常のなんでもない会話を望んでいた。そう、昼休みに同僚と話すような会話だ。

優しすぎる眼をしたMさんと明るくさっぱりとした奥さんのナイス夫婦。

そんなMさんの心の風邪のきっかけは職場内で自分が役に立たないと思い煩ってしまったこと。

奥さんはMさんと向き合い、そして無理やり心療科に引っ張っていった。

奥さんは自身が無理やり夫を病院に連れて行ってしまった、というところに引っ掛かりを感じていた。

”私でも自分の旦那がそういう状況だったら同じ事をした”と伝えるとほんの少し笑顔を見せた。

あの日から1年半。それまでには色々あった。

最初は2種類の薬を飲むのも嫌がった。大の男がこんなになってみっともない、もっと自分がしっかりしてれば、と悩んでいた。傍らで奥さんも辛そうだった。

”Mさんと同じくらい奥さんも辛いですよ”どれだけ伝わっただろうか・・・。

夜寝られないという悩みもあった。

寝られないから昼間眠い、だから昼寝をしてしまう。そして家にいてもやることがないからテレビを見てるだけ。

外にいってもやることがない。奥さんは働きに出ているため一緒にいられない時間があることを心配していた。

”私も毎日午後には眠くなりますよ。どうしても寝るなら30分以内、我慢できそうだったら私ならベランダで外の空気をすったり、天気がよければ散歩をしますよ。奥さんが帰って夕飯ができてたらMさんの株は大上昇ですよ”

こんな対応で良かったのだろうか・・・。

徐々にMさんの体調は回復に向かっていった。

1人でも薬局にこれるようになった。

休職していた職場も上司と相談した上で楽な部署にまわしてもらえることになった。

”ありがたいことです”と涙顔のMさんがいた。

まだ心配だから薬はもっていたい、というMさんの意思を尊重して医師もしばらくは2種類の薬を処方していたが、それも1種類になった。

その頃職場復帰が決まった。しばらくは残業なしの時間短縮勤務という対応で迎えてくれた職場。

”みんな優しく迎え入れてくれたんです。自分の歓迎会も開いてくれるんです”

初出勤の後薬局にきたMさんの第一声だ。

Mさんの人柄とこんなに温かい職場メンバーなら安心、と思わず親心を発揮する私・・・。

そして、最後には薬がいらなくなった。

”お姉さん、もうここにこなくても大丈夫になったよ。来るたびに色々おしゃべりできて楽しかった。ありがとう”私にとってなによりもの褒め言葉だ。

Mさんの奥さんからは丁寧なお手紙を頂いた。私の大事な宝物の1つになった。

振り返ればMさんのここまでの道のりは短かったのかもしれない。でもそれは今だから思えることで最初はいつまで続くか分からない道のりだった。

Mさんに対する奥さんの深い愛情がなによりもの薬だったと思う。

頑張れといわない、という認識広まっているけれど、”待つ”ことも時には大事なのかもしれない。

心の病の専門家ではないから、私の対応が全て完璧だったとは思えない。間違いがあったかもしれない。

それでも、Mさんとのかかわりは私にとって忘れられないひとコマとなった。

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